銀行に行ってきた—振込より、人間の方が面白い—

1.銀行に行くよう頼まれた

先日、上司に頼まれて銀行へ行った。

内容はシンプルなものだった。

正直、自分でも調べれば全部わかる。

でも面白かったのは、
主幹がわざわざ道順の画像まで見せてくれたことだ。

そこまでしなくても大丈夫です、と少し思った。

でもこういうのって不思議だ。

業務の指示というより、
「ちゃんと行けるようにしておいたからね」という、
ちょっとした親切が混ざっている。

会社というのは、
こういう小さな気遣いでできているのかもしれない。

昔はもっと殺伐とした世界にいたから、
こういうのに少し戸惑う。

2.銀行は、静かだけれど情報量が多い

銀行という場所は独特だ。

静かだ。

でも、妙に情報量が多い。

番号札を持って待つ人、
記帳に並ぶ人、
振込用紙を何度も確認する人。

みんな淡々としているけれど、
それぞれの事情を背負っている感じがする。

お金というのは無機質なのに、
その周りにはいつも人間くさいものが漂う。

焦りとか、
期待とか、
あきらめとか。

税理士事務所にいた頃から、
私はそういう空気を少し読む癖がついてしまった。

3.昔、私は“回収する側”にいた

そういえば昔、
税理士事務所で顧問料未払いの回収に関わったことがある。

債権回収、なんて書くと少し物騒だけれど、
要するに「払ってください」の連絡係だ。

これが意外と難しい。

強く言えば関係が壊れる。
弱く言えば払われない。

人間関係と現金の間を、
細いロープの上みたいに歩く仕事だった。

3-1.どうせ無理だ、と言われた案件

その中に、
かなり長く滞納している顧問先があった。

所長はもう半分あきらめていた。

「どうせ回収できないよ。」

そう言っていた。

でも私は、少し違った。

本当に無理なのか、
まだやれることがあるんじゃないかと思った。

だから書類を作った。

一括が無理なら分割。

払える形に変える。

相手が逃げにくく、
でも現実的に払える形に整えた。

3-2.優しく言う。でも逃がさない

このとき私が気を付けたのは、
ひとつだけだった。

言い方はやわらかく。

でも中身は一歩も引かないこと。

感情をぶつけても意味がない。

怒っても払われない。

むしろ相手が動ける道を作る方がいい。

だから言葉は穏やかにした。

でも、
やることは容赦なく進めた。

期日を決める。
確認する。
また連絡する。

淡々と。

その結果、
途中までだけれど回収できた。

全部見届けたかったけれど、
その前に私は転職した。

3-3.回収って、少しだけ人を見る仕事だ

あの時思った。

回収って、
お金を追う仕事じゃない。

人を見る仕事だ。

この人は払えないのか、
払わないのか。

その違いを見極める。

そこを間違えると、
全部ずれる。

銀行で振込用紙を見ていると、
時々あの頃を思い出す。

振り込まれるお金の向こう側には、
いつも人間の事情がある。

経理って、
数字だけ見ているようで、
実はずっと人を見ている仕事なのかもしれない。

4.銀行は万能じゃないし、人も見ている

銀行の用事は、
すぐ終わると思っていた。

行って、手続きして、戻る。

それだけのはずだった。

でも終わらなかった。

窓口で確認が入り、
また確認が入り、
さらに奥で確認が始まる。

気づけば2時間。

銀行という場所は、
何となく「全部わかっている人たち」がいるように見える。

窓口の人は慣れているし、
言い方にも迷いがない。

だからこちらも、
ついそのまま信じそうになる。

でも実際は違う。

人間だから間違える。

認識がずれることもある。

今回もまさにそうだった。

確認を重ねた結果、
最初に言われたこととは違う結論になった。

私は心の中で少し笑った。

ああ、やっぱりそういうこともあるよね、と。

昔からこういうのはよく見てきた。

税理士事務所でもそうだった。

肩書きや立場がある人ほど、
意外とあっさり思い込みで話していることがある。

だから最後は、
ちゃんと自分で考えるしかない。

でも今回よかったのは、
最後に窓口の人がちゃんと言ったことだ。

「勉強になりました。」

謝るだけじゃなく、
ちゃんと自分の認識違いを認めた。

これは案外すごいことだ。

こういう瞬間は嫌いじゃない。

人間らしくて面白い。

会社に戻ると、
上司が言った。

「大変だったでしょう。」

銀行で長く拘束されたことを、
ちゃんと気にしてくれていた。

でも正直に言うと、
私は全然なんとも思っていなかった。

むしろ少し面白かったくらいだ。

こういう、
予定通りにいかないやり取りとか、
認識のズレを整理していく感じとか、
私は嫌いじゃない。

未払い回収のときもそうだった。

普通は気が重いと言うけれど、
私はわりと楽しかった。

どう動けば相手が動くか。

どこに出口を作るか。

考えるのが面白かった。

またやれと言われたら、
たぶん普通にやると思う。

だから銀行の2時間くらい、
私にとっては大したことじゃない。

でも、
そういう“平気なこと”をちゃんと拾って
労ってくれる人がいるのは悪くない。

仕事って、
案外そういう小さなことで続いていくのかもしれない。

5.結局、仕事は数字だけじゃない

銀行から戻る道で思った。

経理って数字の仕事だと思われがちだけれど、
実際はかなり人間の仕事だ。

払う。
待つ。
催促する。
確認する。
謝る。

その繰り返し。

数字だけなら簡単だ。

でもその裏に人がいるから面倒で、
だから面白い。

たぶん私は、
そういう少し面倒なところが嫌いじゃない。

Excelを改善している時も、
銀行へ走っている時も、
やっていることは違うようで少し似ている。

流れを整える。

止まらないようにする。

仕事ってたぶん、
そういうことなのだと思う。